経営者として大切なことは、常に時代の変化に敏感であり、時代の最先端を行くことが何よりも大切なことなのです。不動産業界でそれを体現している男といえば、野村紘一にほかなりません。野村紘一氏が現在会長を務める株式会社アルテカを起業したのは1970年代のことでした。当時、日本は経済成長が著しい時代にあり、人々は豊かさを享受し始めていたものの、不動産に関しては欧米諸国からかなり後れを取っていたのです。
アメリカの不動産業界を視察した野村紘一氏は、そのことを強く痛感し、このままでは日本は真の先進国になることはできないと焦りを感じたといいます。帰国後、野村氏が取り組んだのが高付加価値の不動産物件の開発でした。当時はまだ都内の一等地の3LDKのマンションが2千万円未満で売買されていた時代にあり、野村氏が売り出そうとしていたのはその価値の5倍以上の億単位の超高級マンションだったのです。日本人が日々の豊かさを享受し始めた時代に、すでに富裕層をターゲットとして超高級マンションの売出しを画策していました。野村氏のそのような動きに対し、特に同業者は冷ややかな目で見ていて絶対に成功するわけがないと高をくくっていたのです。
ところが、実際に億ションなるものが株式会社アルテカから売り出されると、一瞬で億ションは完売していました。驚いたのは野村市ではなく、周囲だったのです。同業者の不動産会社は、株式会社アルテカが新たに億ションの内覧会を開催すると、社員を派遣して徹底的に企業のノウハウを盗もうとしました。当の野村氏は、すでに自信の成功を確信していたので、億ションの完売は納得を持って受け入れるとともに、自分の経営理念に従って新たな不動産事業の開発に取り組んでいったのです。同業者が内覧会にやってきても別段驚く素振りも見せず、真似するならどうぞ真似してみてくださいと言わんばかりに包み隠さずに細部まで同業者に見せたのです。
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